「おた」と「あお」二人の好きな活字紹介。熱き思いを亀の歩みでまったりと語ります(笑)
おた&あお・書物ドコロ
冬のオペラ(北村薫・文春文庫) byおた
2006-05-28-Sun  CATEGORY: 未分類
名探偵はなるのではない、存在であり意思である――勤め先の二階に事務所を構えた名探偵巫(かんなぎ)弓彦に出会ったわたし、姫宮あゆみは、”真実が見えてしまう”彼の記録者としてを志願した・・・。猛暑の下町、雨の上野、雪の京都で二人が遭遇した、悲しくも残酷な三つの事件。
自ら名探偵と名乗りつつも少しも気負いや高飛車なところのない名探偵は、探偵家業だけで食べていけないことは重々承知でたくさんのバイトをしています。もうこの長身、すべてが真一文字の巫さんがものすごくいい味です。飄々とまるで空気のように推理を展開していくその姿はむっちゃくちゃかっこいいというか、素敵です。あゆみさんが記録者として立候補するところとか、最後のお話、「雪のオペラ」のクライマックスシーンとか、胸が(それぞれの場面でどういう風に締め付けられるかが違いますが)思い切り締め付けられます。うまい。うまいよ、北村先生・・・!(先生です、本当に)
女性に対しての曲がった見方のない、暖かな目線を感じるのは私だけでしょうか。本当に優しい作家さんだと思います。

おたのおススメ度:★★★★★
↑こうゆうの、つけないでおこうと思ってたんですが
まったく主観でこれだけつけてみます 笑>某方の希望で。
(細かい項目も、これだけの力量の作家さん揃いだと
本当に人の好みだと思うんで
点数みたいにつけるの僭越かなと思い、これだけ〜汗)
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水に眠る(北村薫・文春文庫) byおた
2006-05-25-Thu  CATEGORY: 未分類
「人の数だけ、愛がある」
そんな一節が紹介の文章にありましたが、本当にそのままの短編集でした。 
北村薫さんのかかれる話は細部まで本当によく練られていて、これまた読みやすく、それでいて一種の品とやさしさのある文章なのです。文章にはお人柄が表れると言いますが、ことこの作家さんは「きっとそうなんだ!これはお人柄だ!」と思わせるような深い愛が普遍に流れているような気がします。
特によかったのが「水に眠る」「植物採集」「かとりせんこうはなび」「弟」「くらげ」そして「矢が三つ」と「ものがたり」。特に「水に眠る」はSFファンタジーっぽいんだけど(水の皮とか・・)描写がリアルで、そしてまた夢のようで。ヒロインの気持ちが本当に切ない。切ないといえば「ものがたり」も思い切り<かなわぬ恋>で切なくて(><)!こんな告白、誰が今まで書いたことでしょうか・・・。転じて「矢が三つ」の文体を見て「こんな感じも書けるんだ!」と驚き、そしてラストでお見事!と拍手喝采したくなりました(笑)
切なくて泣けてしまうものから、ひやっとするもの、にやりとするもの。こんなに多くの文章の引き出しを持っている作家さんは「本物」だなって思います。
ちなみに私の最近の「すごい作家」さんは
北村薫さん、梨木香歩さん、タニス・リーさんですね。
震えるほど素敵だと思える作家さんに出会えていることに感謝ですよ。

おたのおススメ度:★★★★★
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いちばん初めにあった海(加納朋子・角川文庫) byおた
2006-05-24-Wed  CATEGORY: 未分類
堀井千波は周囲の音に嫌気がさし、引越しの準備を始めた。その最中に見つけた一冊の本、「いちばん初めにあった海」。読んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開封の手紙が・・・。差出人は<YUKI>。だが千波にはこの人物にまったく心当たりがない。しかも開封すると、「私も人を殺したことがあるから」という謎めいた内容が書かれていた・・。
初めから、なんだかどきどきと話にひかれてゆきます。千波という女性自体がとても風変わりで(いや地味なんですが)これからどうなってゆくのかなと。心がひかれる本、それに挟んであった手紙から思い出される学生時代の麻子との思い出。これがどう伏線に使われるのかと不思議に思いながらも、謎めいた、しかしとても優しいお話を読み進めていけてしまいます。
千波の経験した出来事と心の傷は大層なものですが、彼女は決して(一人になったと思っていても)一人じゃない。彼女は強く、希望を持って生きていける人になる(ならなければいけない)のでした。彼女が立ち直るために心を尽くしてくれた友情と深い愛情がとても胸を暖かくさせてくれます。
もう一つのお話「化石の木」も、成熟していない母の思い出を読むという形で進み、なかなかに苦しくつらい途中なのですが、しかし最後、奇跡に似たあったかな事実がまた現れて、人の心を救済するかのようでした。
加納さんのお話は、人の絆の大元を優しく暖かく描いていて、いつも心が癒され、洗われる思いになりますね。大好きです。

おたのおススメ度:★★★★☆
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タマス・ターラー(タニス・リー:ハヤカワ文庫) byおた
2006-05-24-Wed  CATEGORY: 未分類
美しき女性に化身して、召使兼子供の語学教師として英国人の家庭に入り込んだ妖魔。この妖魔に魅入られて、英国人の少年デイヴィッドは地底の蛇の都に行くが・・(竜の都)。など、現実のインドを微妙に変容させた世界の過去、現在、未来をエキゾチックに語る短編集。
深くて緻密で、そしてえもいわれぬ色気の漂う美しい文章(訳もまた本当に優れている・・・!)、そして不思議と恐れと、妖しさがいっぱいのお話の展開。ほかの国の出来事でもありえるかもなシチュエーションを、インドという国の伝承や神話を含んで非常に個性的なお話に料理するところが本当にすごいと思いました。久しぶりにすごい文章を書く作家さんを知ることができたなあと思いました。
私が心に残った話は「運命の手」と「月の詩」、「竜の都」です。
「運命の手」は人の運命の流れをしみじみと感じるお話でした。そう、人はきっとずっと同じ状態ではいまい。幸不幸一切はいつ何時どう変わって行くのかわからない。しかしその中で変わらないものがある。それが真実。といったことが心に残りました。「月の詩」これは本当に胸にしみます。なんて素敵な男と、女。初めはお互いよく思っていなくても(いたわる、思いやるなど暖かい感情で(そしてここら辺で奇跡というか、素敵なことが起こります!)、夫婦としての絆をこの一晩で培っていく過程を見事に描き出しています。「竜の都」はクライマックス―ラストがぞくぞくしっぱなしでした。
この作家さんのお話は劇場で見たい、そんな風に思わされますよ。戯曲的な文体(とてもきれい・・しつこいですが)に、光(ライト)が効果的に使われている、そんな感じです。話の内容も深く、暗く(陰気ということではない)、そしてなんと言ってもすべて妖しく美しく。麻薬のようなお話です。

おたのおススメ度:★★★★★
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くらのかみ(小野不由美・講談社) byおた
2006-05-23-Tue  CATEGORY: 未分類
「四人ゲーム」。まっくらな部屋の四隅に四人の人間が立ち、方を順番にたたきながら部屋をぐるぐる回るゲームだ。当然四人では成立しないはずのゲームを始めたところ、忽然と五人目が出現した。でもみんな最初からいたとしか思えない顔ぶればかり。行者にたたられ座敷童子に守られているという古い豪壮な屋敷に、後継者選びのため親族一同が呼び集められたのだが。そこでおきる事件と謎を解くべく少年探偵団が結成された。そして。
はじめは幽霊話かとおもいきや、大人たちが(多分)故意に事故に会い、推理小説の様相を呈してきて展開にびっくり。てんこ盛りの内容な気がするのに(まずホラーと推理小説の二本立てというのがすごい・・・)とても読みやすいお話でした。子供たちがノートに書き出しながら、みんなで頭を寄せて知恵を出し合うところなんか本当にいい場面だなあと思いましたよ。子供たちが生き生きと動いています。ラスト近くの内容がすき。読んでくれているだろう読者に向かって、押し付けがましくない価値観の提示があって「こんな書き方いいなあ」と思いました。
三郎さんはじめ、師匠さんとかの大人が大変いい役回りをしています。かっこいいというより、話の中で本当に大事な素敵な役回りということで。よい本だなあと思いました〜。

おたのおススメ度:★★★★☆
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銀色の恋人(タニス・リー:ハヤカワ文庫) byおた
2006-05-22-Mon  CATEGORY: 未分類
シルヴァー・イオナイズド・自動制御・人間型・エレクトロニック・ロボット――エレクトロニック・メタルズ社が試作した精巧仕様型ロボットのひとつ。とび色の瞳に赤褐色の髪、銀色の膚をしたシルヴァーはギターをつまびき、ありとあらゆる歌を紡ぎだす。人々はデモンストレーション中の彼の歌をきそって聞きたがった。だが、たった一つだけ、メタルズ社にとって誤算が生じた。人間そっくりのシルヴァーに恋する少女が現れたのだ。
お金持ちの甘やかされたような少女、母の管理下の元で、友達とのたわいもない付き合いに乗じているジェーンが、シルヴァーを好きになってしまい、彼を得るまで(これは所有物としてですね)の一途な、そしてなんとも勝手な行動に純粋さを感じてまぶしい思いがしました。一緒にいることで、母からの仕送りもなくなり、今まで自分を管理していたもろもろが離れていって、とてもつらく、孤独な思いを持つジェーンでしたが、シルヴァーとともに暮らしていくうちに、自分自身の中に眠っていた可能性にどんどんと目覚め、一人の女性として成長していくのはなんだか応援したくなる。同様にシルヴァーも彼女をロボットの使命として守りながらも、その理由や彼自身の内面がどんどんと変わっていくのですが、歩み寄り、本当に愛することをお互いに知って、かけがえのない恋人となっていく過程が本当に素敵です。
ラストは思い切り切ない。しかし彼女はもう一人ではないのです。
はじめはエロチシズムの面がやたら目についてしまったのですが、読み進むにつれて「これは純愛!とてつもない純粋な恋人たちのお話だ!」と目が開けました。胸がきゅんとなりたい女の子たち、どうぞご一読くださいませー。

おたのおススメ度:★★★★★
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ゴルゴン(タニス・リー:ハヤカワ文庫) byおた
2006-05-20-Sat  CATEGORY: 未分類
ギリシアの海に浮かぶ緑したたる孤島には、見るものを石に買える伝説のゴルゴンがすむと言う。その噂に魅せられて、真偽を確かめるために島に渡った若き作家が出会ったものは・・・『ゴルゴン』。人狼、ユニコーン、猫。海豹、ドラゴンなと、さまざまな幻獣たちをテーマに描かれた幻想的な短編集。
「ゴルゴン」には、ゴルゴンたる理由が驚きつつも納得です。その故に持つ優越感というものをはじめて話として読んだのですが、これも「そうか・・」と妙に納得。「アンナ・メディア」は底冷えのする恐怖を感じました。ここまでの境遇になってしまったのか。管理するという彼女の言葉が本当に怖かったし、家の行く末も悲惨でなんともはや。「シリアムニス」も妖しいエロチシズムの漂うお話で。「白の王妃」は時間軸を超えてしまった二人が真実の愛に目覚めるまで本当に物悲しく、しかし幸せな思いでよりそうことができよかったなと(これだけは)ほっとしました。「にゃ〜お」はクスリと思いつつもひやっとするブラックユーモアの世界。「ドラコ、ドラコ」もなんともリアルで、しかし夢のように切ないお話でした。
タニス・リーのお話は、人でないものが、人のそばへきてその人の深いところを付くというか・・・表面的には襲ったり、だましたり、用するに害をなそうとすることが多いのですが(というか、人も浅はかだったりするんだよね)、その底に流れる思想というか、人の本質を付いているところがものすごく多い気がします。妖しいんです、だけれども文章の美しさや深さ、物悲しい現実を歌うように書く技量というのがものすごいと。酔ってしまうようなお話集です。神話や、古代文明などの文化に興味がある方にはものすごくお勧めの作家さんです。予断でですが、文庫本の表紙や挿絵は、ほんとに彼女のこの短編集とマッチしていてすごいです。とってもきれいなのでどうか見てくださいませ。

おたのおススメ度:★★★★★
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狐笛のかなた(上橋菜穂子・理論社) byおた
2006-05-19-Fri  CATEGORY: 未分類
里の外、夜名ノ森に祖母と二人ですんでいる小夜は、あるとき怪我を負い、猟犬に追いかけられている狐の子を助けようとする。その彼女を助けてくれたのは森陰屋敷に住んでいる小春丸という同じ年ほどの少年だった。二人は秘密で遊ぶようになるが、ある日を境にして会うことができなくなる。そして年月は過ぎ、小夜は祖母の死後、一人で生計を立てて暮らしていたのだが、その身に隠されていた力と過去の封印が解かれて、そして。
きれいな文章でずんずんと続きを読ませられてしまいます。野火と小夜の再会からお互いをかけがえのないものとして思いあうところなどの流れが胸を打ちます。やりきれない恨みを持っていても、それが続くのはいいことなのか考える春望、その気持ちの原動力になるのが大切な息子・・・なんというか、小夜と野火の恋だけではなく、親子の愛情などと言ったものがいくつもの流れで表されて、人を大事に思うことなどを考えさせられました。ラスト、小春丸になったような気持ちで、紙面を見る目が涙で翳りました。

おたのおススメ度:★★★★☆
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血のごとく赤く(タニス・リー:ハヤカワ文庫) byおた
2006-05-18-Thu  CATEGORY: 未分類
さあ、お聞きなさい、グリマー姉妹のおとぎ話を。美しいけれど邪悪な王女や可憐な姫君を惑わす魔物の王子、闇の公子に恋した乙女や狼に変身する美少女たちが繰り広げる、美しく、妖しく残酷な九つの物語を。
タニス・リーが童話をモチーフに書いた幻想的な童話集です。背中がぞぞっとしながらも、うずうずしてしまうこと間違いなしです(笑)
もうなんというか、雰囲気がすべて怪しく幻想的。SFチックなお話でさえもそうですから、そうでないものはもうなんと言っていいのか・・(><)!!色っぽいですー。そして流れる文章にやられます。私が一番印象に残っているのは「姫君の未来」。蛙の王様が元話なんですが、うわー、こんな風になってしまった・・・こわいよ〜と胸がどきどき。「血のごとく赤く」も怖い・・でも情景はものすごく美しく、退廃的でありながらとっても艶かしいのですよ、体の芯がぞくぞくしましたよ。
ファンタジーと童話がお好きな方、どうそお読みください。
こんな展開もありか、と引き込まれてしまいます。

おたのおススメ度:★★★★☆
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冬物語(タニス・リー:ハヤカワ文庫) byおた
2006-05-18-Thu  CATEGORY: 未分類
祭壇に聖骨が納められていることを知る者は、巫女のオアイーヴだけだった。だが、その聖骨が狼の毛皮をまとった奇妙な男に盗まれた。聖骨はその男にとってどのような意味を持っているのか?はたまたその男の正体は?
ゲームは始まっている。とグレイは言う。それに翻弄されるオアイーヴの旅が実はこんな意味があるとはと驚きでした。時空を超えて、お互いが必要だった(恋とか、そんな風に限定したものではなくて、もっと大きないろいろな意味でに思える・・)のが、ゲームの本当の意味、終わりになるのですね〜。文章自体がとってもどきどきとさせる美しさと酩酊感を味わえる感じです。訳者の方もものすごいなあと。二人が対峙してい話をしているところでさえも、なんだか官能的ですよう。いやらしい意味じゃなくて。
ラスト、うわーって感じでした!きれいな青が頭にばばっと浮かびましたよ、情景が色を持って浮かんでくる素敵な文章です。

おたのおススメ度:★★★★★
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リセット(北村薫・新潮文庫) byおた
2006-05-18-Thu  CATEGORY: 未分類
昭和二十年五月、神戸。疎開を前に夢中訪ねた私を、あの人は黄金色の入り日の中で、穏やかに見つめてこう言いました。六年半前、あの人が選んだ言葉で通った心。以来遠く近く求め合ってきた魂。流れる二つの<時>はめぐり合い、もつれ合って、個の悲しみを声、生命と生命をつなぎ、奇跡を呼ぶ。
・・なんと言っていいのか(感涙)お涙頂戴ではないのに、胸がいっぱいになってうるうるとしてきてしまいます。戦中の淡い、それでも真剣な恋。実らないままだったそれは、時を経てまた彼と彼女に起こるのです。それだけしかよみがえらな記憶。個が変わってもその人を求め、大切に思う人の心が書き切ってあって、「なんて人はきれいで優しいものなんだろう」と思います。ラスト近くからラストまで本当に情景が素敵でした。その描写から伝わってくる、深い愛情も。具体的に書くとネタばれどどんとしてしまいそうなんで、どうか読んでくださいー!
すごくいいです。もっとこの人の話が読みたい(><)!

おたのおススメ度:★★★★★
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ジュリエットの悲鳴(有栖川有栖・実業之日本社) byおた
2006-05-16-Tue  CATEGORY: 未分類
表題の作品を含む短編集(結構いろいろな書き方で書いていらっしゃいます。ご自身いわく『ごった煮の味わいが・・』笑)。
まずは表題。ロック好きな私は、なんとなくこういうネタだと親近感がぐっとわくんですよね。「暗い宿」にもロックミュージシャンネタがあったけど。でもとても切なかった・・・(><)ミステリーというよりは、懺悔にも似た悲しいお話でした。ロミオ・・そしてジュリエットの悲鳴。お上手です。
「夜汽車は走る」「落とし穴」はもう犯人の気持ちになって一緒にラスト付近までどきどきしっぱなし・・・。心臓に悪いですよ、こういう話は(苦笑)
「パテオ」はファンタジーですね。作家さんを主人公に書かれた話なんですが、夢という題材を使っていながらなんだかリアルで、さすが自分のお仕事を題材に書いてないわねって感じでした。「危険な席」もぞくりとしますよ。大丈夫、あなたって主人公に言いたいくらいですが。
「登竜門が多すぎる」は思わず笑ってしまいました!あはは、なんだか暗い笑いです(ラストにかかると)。作家さんは本当に受けるんじゃないでしょうか。宮部みゆきさんから「面白かった」とはがきも届いたということで、ある意味ツボな作品です(笑)
「タイタンの殺人」はなんで宇宙人が登場人物なの?なんにも普通の殺人事件推理もんと変わらないじゃないのって思いながら読んでたのですが、ああ、これが使いたかったからそうしたのねってやっとわかりました。読んで納得(笑)
作家さんも楽しんで書かれたんだろうなと伝わってくるようなお話群でした。

おたのおススメ度:★★★☆☆
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丹生都比売<におつひめ>(梨木香歩・原生淋) byおた
2006-05-15-Mon  CATEGORY: 未分類
壬申の乱前〜亡くなるまでの草壁皇子のお話です。優しく雅やかな文体で大和朝廷から奈良の時代へと移り変わるさまを描いています。
体の弱い草壁皇子は、里でキサという口のきけない少女と出会い、彼女から耳で聞くことのないいろいろなことを与えられ、そして成長していきます。
大きな戦をまたいで時は流れてゆく。何もできない病弱な自分をある意味厭いながらも、懸命に自分を探して生きている草壁皇子。あるとき彼はモマという妖かしの生き物を追って・・・。
母からも父からも弱いものと思われ、異母兄弟の大津皇子に対してかなわないと思う気持ちを持っている、しかしとても綺麗で優しい心を持った彼が、キサとふれあい、彼女から銀の勾玉をもらい、それを頼りに一生懸命今自分にできることを探りながら生きていく姿は本当にいとおしくなります。
病弱だった彼は本当は水銀中毒となって死んだのだ。そしてそれを企んだ張本人は・・・。ひとつの仮説を元にした、ひたすらにきれいな彼を描いている透き通る水の流れのようなお話です。お隠れになっていた姫神、丹生都比売の降臨を実現させ、大海人皇子に勝利をもたらしたのは、姫の愛した彼であった。ラスト、涙がにじみます。
一言いとおしい。そんなお話です。

おたのおススメ度:★★★★☆
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赤姫さまの冒険(パウル・ビーヘル:徳間書店) byおた
2006-05-14-Sun  CATEGORY: 未分類
今日は赤姫さまの12歳の誕生日。生まれて初めてお城の外に出る日です。ところがパレードの真っ最中、赤姫さまは盗賊たちにさらわれてしまいます。盗賊の隠れ家をうまく逃げ出したものの、「国の民」は誰一人、赤姫さまの言葉を信じてくれません。赤姫さまは無事お城へ戻れるのでしょうか。誰よりも易しかった盗賊の親分シッポノホコリの運命は・・?
うわーん。これは切なく、でもとてもいいお話でした。
連れ去られた姫様が、はじめて生身の男性とふれあい、かすかな恋心を抱くところから彼女の心の成長がはじまるのですよね。うわー、すごいことです。自力で脱出した彼女が「わらわは姫じゃ!」と自分のアイデンティティを叫びながらも、ほかの世界と称されていたお城の中以外のリアルな世界の中で、力を蓄え、いろいろな経験をしながら女性として成長していくその過程になんと無駄がありません。易しく楽しく読める文章の中にちゃんとすべて書かれているのですよ。
シッポノホコリとお互いに思い合いながらのラストは本当に切ないです。生まれた環境から逃れないの弱さではなく、愛する人が一番の場所で生きられることを望んだ彼と、自分で自分の立場を選んだ彼女の心が本当に尊いと思います。ほかの世界を知り、人を愛することを知った彼女だからこそ、今度は望遠鏡の中の世界を治めるべき人物になりえたのでしょうから。
こういうラストだからこそ(彼女自身が鍵をかけた)本物の女王様になれたのでしょうね。そう、彼女が言うように『わらわは、わらわ』なのです。自分でしかありえないし、そうでなければいけないですね。

おたのおススメ度:★★★★★
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カーディとお姫様の物語(J・マクドナルド:岩波少年文庫) byおた
2006-05-14-Sun  CATEGORY: 未分類
カーディが地下のゴブリンの国からお姫様を救い出してから一年がたちました。彼は父母の元で鉱夫として働いていましたが、またアイリーン姫と王国が危険にさらされました。悪賢い従者たちが権力と富をねらった策略をめぐらし始めたのです。カーディは怪獣たちの力を得て悪者たちと戦いはじめます。「お姫様とゴブリンのお話」の続編です。
よい王様に治められていてもほんのすきまをついて悪者が暗躍し始めたり、悪い考えが人の心を誘惑してしまうのが世の常でしょう。このお話も途中も締めもそんな感じで、リアルです。だからこそカーディのおばあさまとの場面(カーディの手が不思議な力を持つところ)、リーナと心を通わす場面などの神秘さが生きているとも思います。見える世はこの世ですが、そうではない世界が優しく必要に応じて介入する必要性、またはそういう場面があるのです。今回はカーディがとても活躍します。彼の成長とともに周りの世界が動き、そして変わり始めます。そんなカーディと再開したアイリーンも以前とはまた違って、少女の中に大人の聡明さをたたえた素敵な女の子として登場。二人はまわりの人とともに王様を助け(導く役割も果たしていますね)国を正しい不幸へと導いていきます。
なんと表現していいのかなといつも思うんですが、マクドナルドさんの話には神秘的な趣がありますね。何かの儀式が本を通して行われているような感覚にとらわれます。

おたのおススメ度:★★★★☆
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お姫様とゴブリンのお話(J・マクドナルド:岩波少年文庫) byおた
2006-05-11-Thu  CATEGORY: 未分類
山の奥呼格にある館に、かわいらしい8歳のお姫様がすんでいました。ところがこの山の底にすむ恐ろしいゴブリンの王が、お姫様を奪って息子の嫁にしようとしたことから地所対地下、人間対ゴブリンのすさまじい争いになりました。お姫様を救うのは誰?(本のカバーから)
J・マクドナルドのお話です。
子供向けのお話なんですが、いやはや一言で言って深い。
登場人物の心の動き(乳母に泣きつかれたときのアイリーン王女の気持ちとか、おばあさまを見ることができなかったカーディーのそのあとの心情の変化とか)がとても事細かに、リアルだなあと思いました。
ゴブリンたちが(元は地上に住み、人間とほとんど変わらない姿をしていたのですが、自分たちの我侭な意思で地下へ下り、そして醜い姿に代わって言った、そして人間に敵意に似た気持ちを抱えているところは、天使の失楽園に酷似していて、マクドナルドの思想の一部を覗けたような気がします)醜悪に書かれているのがなんだか惨めで、そしておかしかったです。
アイリーンもカーディーもいちずでかわいい。その場自分のできることを力いっぱいしようとする心の善良さがたまらないなあ。「本当のお姫様」であるし、あろうとするアイリーンは本当にけなげですよ。彼女にあらわれ、彼女を彼女の本当の人生というか、真実へと導くような働きをするおばあさまの存在がこの物語の核心、神秘的にお話を導いて言ってくれています。何度も読み返して見たい本です。
おばあさまのこの言葉が本当に印象に残ってるんですよ。
「・・・世の中の人はみんなお馬鹿さんばかりで・・・年をとるってことがわかってないのよ。・・・・ちゃんと年をとれば、強くなって、きれいになって、陽気になって、勇敢になって、目がよくきくようになるし、手足も丈夫になって、痛んだりしないもの」
この言葉、本当に深いです。感動しました。

おたのおススメ度:★★★★★
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竜の探索&白い竜(アン・マキャフリィ:創元推理文庫) byおた
2006-05-10-Wed  CATEGORY: 未分類
先に感想を書いた「竜の騎士」の続きの二作。別々に感想を書こうかなと思いつつも、えーい、続きで読んでしまったんだ、まとめてしまえ(笑)と勢いに任せて書いてしまおうと思います。
話は一作目からどんどんと時は過ぎ、旧時代からやってきた人たちと現代のパーンの人たちとの間に軋轢が生じます。とうとうフーラルの異母弟フーノルが諍いで怪我をして、統領たちは会議を開きます。その上糸胞は予期せぬときにでも降るようになり、事態は深刻に。竪琴の長ロビントンやその他の有用な人物と協力しながら、その中で(自身も争いで負傷してしまいますが)フーラルは地虫が糸胞を襲って食べ、大地を癒すことを知り、地虫を繁殖させることを提案します。そして時は流れ、レサがルアサの次期太守を譲ったジャクソムも少年から青年へと成長しました。彼は長生きはできないと言われた小さくて白い竜、ルースと感合し、竜の騎士としても成長をすることになるのですが・・・、というような展開です。
長い長い話なので、書いてたら筋だけで終わってしまう・・本当にずっと続く(レサとフーラルの息子が大きくなるのですから)惑星パーンの抒情詩といった感があります。話の筋はぜひに読んでいただきたいところ。筋をいうよりも出てくる登場人物のそれぞれの心の動きとかの表現が上手だと思います。
このお話では竜と人間の結びつきがそれは事細かに描かれていて、親しい友情をひしひしと感じますよ。竜のしゃべり方もかわいい(訳者の方の労力でしょうね!)
次の世代がどんどんと育ち、新しい女王竜は若い竜の騎士たちもどんどんと出てきて、時代とはこうやって移り変わるのだなという当たり前の時間の流れを思いながらも、変わらない統領としてのフーラルのすばらしい統制力やレサの激しさなど楽しめてうれしかったですー。
そしてまったくの余談なのですが、なんとなく全般的に大味ではじめこそ「ふーん」と言った感じで読み終わってしまうのですが、そのあと「あそこはどうだったっけ?」などと内容が気になって仕方がなくなるような本なのですよ!あと、恋人たちの描写が(そんなに事細かでもないくせに)やたら官能的・・・そこがまたいいんですよねー(笑)
まだまだ続きはあるみたいなので、ぜひ探してきたいですー(^^)

おたのおススメ度:★★★☆☆
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ささら さや(加納朋子・幻冬舎文庫) byおた
2006-05-06-Sat  CATEGORY: 未分類
事故で夫を失ったサヤは赤ん坊のユウ坊とともに佐佐良の町に移住する。けれど、その度に亡き夫が他人の姿を借りて助けに来るのだ。そんなサヤに、義姉がユウ坊を養子にしたいと圧力をかけてくる。そしてとうとう、ユウ坊が誘拐された。ゴーストの夫とサヤが永遠の別れを迎えるまでの日々をやさしく切なく書いてあります。
交通事故でいきなり命を奪われた夫が「馬鹿っサヤ」と愛をこめて語りかけながら回りの人の姿を借りて一人になった彼女を守っていくところがまずなんともやさしいのです。気が優しく、頼りなげなサヤがユウ坊を守るために一人で生活しようとするのをほっておけない、死んでもなお消えない愛情。「あなた」といつも頼りにし、現れてと期待するサヤが引越し先で優しい友人たちを作り、少しずつ一人で立って歩けるようになり、自分を亡くした心が癒されてゆくにつれ、ちゃんと夫は彼女との別れを準備しているのですよね。生きているから、悲しいことは悲しいままでも、またちゃんと生きていけるようになる。それはうれしいと同時に、寂しさも覚えることですが・・・。サヤの日常に潜むミステリーとともに、話にぐいと引き込まれ、そして涙する素敵なお話です。「ささら さや」を聞くのがこれで最後になったとき、それは切なくそれでもまた希望に満ちた人生の始まりなのでした。
子どもを持つお母さん、ハンカチ持参でお読みください(私は新幹線の中、鼻をぐじぐじとすすってました・・・)。そして好きな人がいる人人を好きになった事のある人も、みなさんへお勧めの優しい優しいお話です。
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すべてがFになる(森博嗣・講談社文庫) byおた
2006-05-04-Thu  CATEGORY: 未分類
三河湾に浮かぶ島に、真賀田四季の研究所があった。彼女は幼少から天才の名をほしいままにしていたが、十四のある日、両親を殺してしまう。心神喪失ということで無罪になった彼女はそれ以降、研究所に閉じこもったまま外界との接触を絶って研究に没頭しているはずであった。
西之園萌絵はカメラを介しての面会を彼女と果たすが、それに飽き足らず、大学の仲間や学科の助教授である犀川とともに、島へキャンプに訪れた。もう一度研究所へ訪れた萌絵と犀川は、四季と何日か連絡が取れない状態であることを知る。ロックが解除され、ドアが開かれると、彼らの前に信じられないものが現れる。それはウェディングドレスを着、四肢を切断された状態でワゴンロボットに乗せられた死体だった・・・。
なんとも不思議な読後感。天才という四季の思考や話す内容に違和感を覚えたりするのですが、犀川や萌絵の内面の動きや思いが時として生々しく、それとリンクしながらの話の展開はトントンと読める感じのものでした。たくさんの登場人物が出てくるのですが、混乱することなく読めたのは人物たちがしっかりとそれぞれの個性を持って動いているからだなと思います。
理解できない、けれど何だか人をひきつけるもののある天才という人間というのは、こんな風に書けるのだなと変なところに感心したり。トリックとしてはコンピュータの知識がある程度いるものの、伏線が結構わかりやすくいくつもあり、萌絵が行き着いた結論までは「そうだよね」と納得できます。ただ、そこからが問題(苦笑)。意外な展開に論理的には納得できても、普通の感覚では動機がわかりにくいだろうなと思います。「四季」4部作と重ねて読むが一番なのですが、さて、どちらを先に読んだものか。私は先に「四季」を読んだので、場面場面「四季」とオーバーラップさせて読んでいて、わかりやすかったですが、こちらを先に読んだ方が(多分四季の考えに腑が落ちる率は低くなっても)衝撃は大きかったかなと思います。
いやはや、本当にこの人はどこがどういいとかわからないけど、読ませてしまう作家さんです。

おたのおススメ度:★★★★☆
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家守綺譚(梨木香歩・新潮社) byおた
2006-05-02-Tue  CATEGORY: 未分類
売れない小説家、綿貫は、親友であり湖で行方不明となった親友高堂の家の守として彼の父から頼まれて住むことになる。
そこで出会う不思議な世界、不思議な生き物たちとのちょっとおかしくそして暖かな交流と、ボートをこいで時々訪れるこの世のものではない高堂との付き合いなどのお話。
やわらかく美しく、韻を踏んだように完成度の高い流麗な文章。読み始めてつい、音読をしてしまいました。これは耳からもこの美しさを味わいたいと思わせる文章です。無駄なところや足りないところなど何一つないような綺麗な文章に一発でやられました。
植物を題材に一年通して綿貫が出会う不思議で、でもなんとも優しい世界の数々。ほおっとため息をついたり、クスリと笑いが漏れたり。日本の古きよき時代の(ほんの百年少し前の物語ということでした)雰囲気が妖しのものたちの登場と本当に違和感なくて。こんな風に昔は人も人でないものたちも温かく交流していたのかもとほのぼのとしてしまいます。
高堂とのやり取りで、最後とうとう違う世界に足を踏み入れた綿貫が、どう思うかなどの場面で本当にしみじみと考えさせられました。この物語の核心の部分だと思います。
大好きになった本です。手元におきたい・・・・。

おたのおススメ度:★★★★★
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ロシア紅茶の謎(有栖川有栖・講談社文庫) byおた
2006-05-01-Mon  CATEGORY: 未分類
古本屋で衝動的に買ってしまいました。有栖川さんの本。
(図書館で借りることがほとんどだったのに・・・)
これからそろえることになるのでしょうか。墓穴です。

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作者が大ファンであるというクイーンのひそみにならった国名シリーズの第一弾だということです。火村とアリスのシリーズ短編集。
表題の「ロシア紅茶の謎」は、またこれが小道具ににやりとしてしまいましたよ。70年代のブリティッシュロックがお好きですか、火村さん!ローリングストーンズを聞いて口笛を吹き「マイクがあったら歌いだしかねない」とアリスに言われる彼がものすごく近しい人に思えます(笑)有栖川さんの作品には、本当に私が「神様〜!」と思いつつ若いころ聞いたロックのタイトルとかが出てくるんで、それににまにまとしてしまいます。そして殺人の方法にどっきり。これはもしかして相打ちにもなりかねないと思いつつも、犯人のやるせない思いが伝わってきて、苦しくなりました。
短編ですから、長編のように時系列を追って推理を述べるというわけではないのですが、短編には短編の思いがけないトリックというのがあるわけで。今回も「おお!」とか「ええ?」とか変な声をあげさせてもらいました(笑)特に意外だ!と思ったのは、「屋根裏の散歩者」と「ルーンの導き」。そうだったのか!とびっくり。
感想から離れてしまいましたが、本当に作家アリスを読むと(私は心持ちアリシストを自認していますが 笑)火村って素敵だなあと思ってしまいます〜(><)!キャラにどうのこうのって思って好きになった有栖川作品ではないのですが、惹かれますねえ、彼には。
ミルクの入ったコーヒーと、ピーナツバターを塗ったトーストが食べたくなりましたよ、ええ(笑)
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